有利な銀行取引について

銀行格付けの本来の目的は、融資の目安に非ず


金融機関にとっての自己査定は、融資先が保有する資産の基準を査定し、適切な引当金を計上することが目的です。つまり、金融機関の資産の健全性を確保し、資産内容を客観的に反映した適切な償却や引き当てを行い、正確な財務を確保していくための制度です。

そして、自己査定の中心となるのが、「融資先への貸出金の分類」であり、これを正確に行うために、実態に基づいた貸借対照表(バランスシート)を作成するのです。この考え方は、バブルが崩壊し、銀行が数多く倒産した時に日本の不良債権を把握しなければならないという喫緊の必要性から、アメリカの企業査定の方法を導入し定着したのが始まりです。

これが企業の事業内容を把握して、「債務者区分」とよばれるランク付けをしていき、「正常先」、「要注意先」、「要管理先」、「破綻懸念先」、「破綻先」に分類していきます。このランクに応じて、金融機関が引き当てる金額が決まっている・・・というわけなのです。

もちろん「正常先」に近ければ近いほど、債務不履行となる可能性が低いことから、金融機関は利子を低くしてくれるでしょう。一方でランクが低ければ低いほど、新規融資を受けにくくなり、場合によっては融資の回収行動へ移る可能性が出てくるのです。

これらのことを踏まえて考えると、自己査定における債務者区分とは、中小企業にとってはお金を借りることができるかどうかの目安かもしれませんが、銀行にとっての本来の目的は「金融機関の不良債権を計算するためのもの」ということをご理解いただけるでしょうそのゴールは、自分たち金融機関が倒産しないようにすることであり、あくまでその過程において、財務内容の悪い企業には融資してはいけないと国から注意喚起されているわけです。

金融機関は自己査定という作業を通じて、企業の債権管理を行っています。この査定結果に応じて、融資企業への貸付方針を年に一回変更しています。このため、融資を受ける側としては、どのような方法によって自社が査定されているのか知っておくことは、今後の資金繰りを議論するうえでも必要な情報となりうるでしょう。

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