売上増加が招く「運転資金」の落とし穴
中小企業にとって売上の増加は成長の証です。しかし、売上が増えることでかえって資金繰りが厳しくなるケースがあります。それは「売掛金」「棚卸資産」「買掛金」という三つの要素が大きく関係しています。本記事では、この現象を分かりやすく解説し、資金繰りを安定させるための対策をご紹介します。
売上増加と運転資金の関係
売上が増加すると、通常は会社の収益が上がり、経営が安定すると思われがちです。しかし、売上増加に伴い「売掛金」や「棚卸資産」が増えることで、必要な運転資金も増大します。売上が伸びるほど資金が必要になり、場合によっては資金不足に陥るリスクがあるのです。
運転資金とは、事業を運営するために必要な短期的な資金のことで、主に以下の3つの項目に影響されます。
- 売掛金:取引先に対して商品やサービスを提供した後、まだ受け取っていない代金
- 棚卸資産:販売目的で保有している商品や製品、あるいは製造中の材料など
- 買掛金:仕入先に対してまだ支払っていない代金
売掛金が増えるとどうなる?
売上が増えると、売掛金も増加します。これは、取引先に商品やサービスを提供したものの、まだ現金として回収していない代金を意味します。回収サイト(支払い期限)が長い場合、回収までに時間がかかるため、その間に必要な資金を確保する必要があります。
例:売上が月に1,000万円増加した場合、掛け売り条件が「月末締め翌月末払い」だとすると、最低でも1,000万円分の資金を1か月間運転資金として確保する必要があります。
棚卸資産の増加が資金を圧迫する理由
売上が伸びるということは、それに対応するための商品や材料の在庫も増えることを意味します。この在庫は現金化されるまで会社の資金を拘束します。特に、販売サイクルが長い業種では、棚卸資産が資金繰りを圧迫する大きな要因となります。
例:新たに月500万円分の在庫を仕入れた場合、それを販売して現金化するまでの期間は資金が動かない状態になります。
買掛金の増加は必ずしも安心材料ではない
売掛金や棚卸資産に比べ、買掛金は「支払いを待ってもらえる」という点で資金繰りの助けになるように見えます。しかし、支払いサイトが短い場合、売上代金が回収される前に支払い期限が到来すると資金不足に陥る危険性があります。また、仕入先との信頼関係を維持するためには、適切なタイミングでの支払いが求められます。
資金繰りを安定させるための3つの対策
キャッシュフローを定期的に把握する
売上増加に伴う運転資金の増減を可視化するために、定期的にキャッシュフロー計算書を作成し、現状を把握しましょう。これにより、資金繰りが厳しくなるタイミングを予測できます。売掛金の回収期間を短縮する
売掛金の回収を早めるために、取引条件の見直しを検討しましょう。早期入金割引を導入することで、取引先に早く支払ってもらえる可能性が高まります。在庫管理を徹底する
必要以上の在庫を持たないよう、需要予測を正確に行い、在庫回転率を向上させる工夫をしましょう。これにより、棚卸資産に伴う資金の拘束を減らすことができます。
資金繰りの管理で会社の未来を守る
売上増加は会社にとって喜ばしいことですが、運転資金への影響を考慮しなければ、資金繰りの悪化により経営が危機に陥ることもあります。売掛金、棚卸資産、買掛金の動きを常に意識し、適切な管理を行うことで、健全な経営を維持することが可能です。
経営者としての責任を果たし、持続的な成長を目指すために、資金繰り管理に取り組みましょう。計画的な資金運用が、あなたの会社を次のステージへ導きます。
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