銀行が企業の信用力や融資判断を行う際に重視する財務指標の一つに経常利益があります。経常利益は、企業の本業と金融収支(営業外損益)を含めた利益を示し、安定的な収益力を測るために重要です。一方、**フリーキャッシュフロー(FCF)**は、企業が実際に手元に残すことができる現金の流れを示し、資金繰りの安定性や負債返済能力を測るために活用されます。
経常利益とフリーキャッシュフロー(FCF)の相関性
銀行目線で経常利益とFCFの相関性を考える際、以下のようなポイントが重要になります。
1. 高い相関が見られるケース
• 本業の収益性が高く、設備投資が抑えられている企業
• 安定した経常利益を計上しながら、投資に過度な資金を使わない場合、FCFもプラスになることが多い。
• 例:ソフトウェア業界やコンサルティング業界(設備投資が少なく、営業キャッシュフローが安定)
• 借入金の返済が少なく、財務的な負担が小さい企業
• 利払い負担が小さいため、経常利益の大部分がキャッシュとして残りやすい。
• 在庫の回転が早く、売掛金の回収がスムーズな企業
• キャッシュの流動性が高く、経常利益とFCFの乖離が小さい。
2. 低い相関が見られるケース
• 設備投資が多い企業(キャピタル・インテンシブな業界)
• 例:製造業、不動産業、インフラ企業
• これらの企業は、設備投資によってキャッシュアウトが大きくなり、経常利益が高くてもFCFがマイナスになることがある。
• 売掛金の回収が遅い企業
• 経常利益は計上されるが、実際のキャッシュ・インが遅れることでFCFが減少。
• 借入依存度が高く、利払い負担が大きい企業
• 経常利益がプラスでも、財務キャッシュフロー(借入返済など)によってFCFが圧迫される。
• 一時的な利益が含まれる場合
• 経常利益には、為替差益や投資有価証券の売却益などが含まれるが、これはキャッシュフローには直接影響を及ぼさないため、相関性が低くなることがある。
銀行が融資判断で重視するポイント
銀行は融資を実行する際に、単に経常利益が黒字であるかを評価するだけでなく、FCFとの関係を考慮しながら企業の返済能力を判断します。特に以下の点を重視します。
1. 経常利益が安定的か
• 過去の推移を見て、収益が安定しているかを評価。
• 一時的な利益ではなく、本業の収益力が伴っているかを確認。
2. FCFがプラスであるか
• 設備投資が多くても、営業キャッシュフローが安定しているかがポイント。
• FCFがマイナスでも、将来的な成長投資として合理的な範囲内かを評価。
3. 利益とキャッシュフローの乖離が大きくないか
• 経常利益が黒字なのにFCFが大幅なマイナスの場合、資金繰りが悪化する可能性が高いため慎重に評価。
4. 借入依存度が高すぎないか
• 借入返済が負担となり、キャッシュフローが圧迫されていないかを確認。
まとめ
銀行目線で考えると、経常利益とFCFの相関性は、企業の業種・ビジネスモデル・財務状況によって異なります。 収益性が高く、借入依存度が低い企業では相関が高くなりやすく、逆に設備投資が大きい企業では乖離が生じやすいです。融資判断では、単に経常利益の大きさだけでなく、FCFの健全性も併せて評価することが重要です。
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