財務分析(現状分析)とは

銀行員が純資産をマイナス評価して債務超過になる「含み損益」


企業の財務状況を示すバランスシート(貸借対照表)は、銀行が融資判断を行う際の重要な資料です。しかし、銀行員がこのバランスシートを単純に受け取るだけでなく、「含み損益」を精査し、それを純資産から控除するケースがあるのをご存じでしょうか?このプロセスは、企業の実態に即したリスク評価を行うために欠かせません。本記事では、銀行員がバランスシートの含み損益をどのように評価し、なぜ純資産から控除するのか、その理由を解説します。



含み損益とは何か?

含み損益とは、帳簿上では表れていないものの、保有資産や負債の市場価値が変動することで生じる潜在的な損益のことを指します。たとえば:

  • 含み益:土地や建物の市場価格が帳簿価格より高い場合に発生。
  • 含み損:有価証券や在庫の市場価格が帳簿価格より低い場合に発生。

バランスシートには、これらの含み損益が直接的に記載されているわけではなく、帳簿上の価格(簿価)に基づいて資産や負債が計上されています。



銀行が含み損益を重視する理由

1. 資産の実態把握のため

企業の純資産(自己資本)は、資金繰りの安定性や返済能力を示す重要な指標です。しかし、純資産が帳簿上の価格だけで算出されている場合、実態を反映していない可能性があります。特に、土地や有価証券の価値が大幅に下落している場合、そのままでは企業の健全性を過大評価してしまいます。銀行はこれを避けるため、含み損益を調整して純資産の実態を把握します。

2. 債務超過リスクの回避

バランスシート上では純資産がプラスに見えていても、含み損が大きい場合、実際には債務超過状態である可能性があります。銀行は、こうしたリスクを見逃さないために、含み損を純資産から控除し、リスクを評価します。

3. 担保価値の適切な評価

企業が保有する資産は、融資の担保として提供されることが多いですが、含み損が大きい場合には担保価値が低下します。これを見落とすと、万が一の際に回収不能リスクが高まるため、銀行は時価評価を通じて含み損益を反映させることが重要なのです。



含み損益が純資産に与える影響

含み損益の調整を行うことで、バランスシート上の純資産は次のように変化します:

  • 含み益が大きい場合:実態純資産は帳簿上の数字よりも高くなり、企業の財務基盤が強いと評価されます。
  • 含み損が大きい場合:実態純資産が帳簿上の数字よりも低くなり、場合によっては債務超過とみなされることもあります。

銀行がこうした調整を行うのは、企業の財務状況を正確に把握し、適切な融資判断を下すためです。



含み損益調整が経営者に与える影響

1. 融資条件が厳しくなる可能性

含み損益を控除した結果、純資産が大幅に減少する場合、銀行は融資条件を厳格化する可能性があります。具体的には、金利の引き上げや追加の担保提供が求められることがあります。

2. 資産運用の見直しが必要に

含み損が大きい場合、経営者としては資産運用を見直す必要があります。不採算の固定資産を売却し、現金化することが求められるケースもあります。

3. 財務健全性のアピールが難しくなる

含み損益調整後の財務状況が悪化した場合、取引先や投資家からの信用度が低下するリスクもあります。この場合、迅速な改善策の提示が重要です。



経営者が取るべき対策

1. 資産の定期的な再評価

経営者は、企業が保有する資産の市場価値を定期的に評価し、含み損益を正確に把握することが必要です。不動産や有価証券については、外部の専門家による評価を活用することが効果的です。

2. 銀行との情報共有を強化

含み損益を反映した財務資料を銀行に提供することで、融資担当者との信頼関係を強化できます。透明性の高い情報開示は、融資条件の改善につながる可能性があります。

3. 資金繰り計画を見直す

含み損が判明した場合、返済計画や資金調達計画を見直し、銀行と協議して現実的な対応策を模索することが重要です。



まとめ:含み損益の理解が資金繰り改善の第一歩

銀行員がバランスシートの含み損益を純資産から控除するのは、企業の財務状況を正確に把握し、リスクを適切に管理するためです。経営者にとっては、このプロセスを理解し、適切に対応することが資金繰りの安定化や融資条件の改善につながります。定期的な資産評価や透明性の高い情報開示を行い、銀行との信頼関係を構築することで、企業の成長を支える健全な財務基盤を築くことができるでしょう。

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