有利な銀行取引について

会社が赤字でも債務超過でも、銀行融資を受けられる時


銀行融資における自己査定は、企業の財務状況や経営状態を詳細に分析する過程で行われます。この評価は、融資の条件設定や継続的な取引の判断に大きな影響を与えます。しかし、自己査定において単に企業の財務諸表だけでなく、経営者個人の資産や信用力も考慮されるケースが多いことは、意外と知られていません。特に中小企業では、経営者の個人資産が「事実上の営業利益」として評価され、融資判断に大きな影響を与えることがあります。本記事では、なぜ銀行が経営者の個人資産を企業評価に含めるのか、その背景と影響について解説します。



銀行が経営者の個人資産を考慮する理由

1. 中小企業と経営者の密接な関係

中小企業では、経営者個人の資産と企業の財務状況が密接に結びついていることが一般的です。特に以下のようなケースでは、経営者の個人資産が企業の信用力を支える重要な要素となります:

  • 経営者が個人資産を担保に提供している。
  • 経営者が企業の資金繰りを補うために個人資金を貸し付けている。

こうした状況では、銀行は経営者個人の財産状況や信用情報を企業の実力として捉える傾向があります。

2. 貸し倒れリスクの軽減

銀行にとって、融資先の貸し倒れリスクを低減することは重要です。経営者が個人資産を保有している場合、企業が一時的に資金繰りに苦しんでも、個人資産から補填される可能性が高いため、リスクが低いと判断されます。逆に、経営者個人に資産がない場合、企業の資金繰り悪化が即座に債務不履行に繋がるリスクが高まります。



評価対象となる経営者個人資産の種類

銀行が自己査定で考慮する経営者個人の資産には、以下のようなものがあります:

  • 不動産資産:自宅や保有している賃貸不動産など。特に不動産は安定した価値を持つ資産として評価されやすいです。
  • 預貯金:流動性の高い資産であり、緊急時の資金補填能力として重要視されます。
  • 株式や投資信託:市場性のある金融資産も評価対象になりますが、価格変動リスクがあるため慎重に評価されます。
  • 生命保険の解約返戻金:解約時に得られる金額も流動性資産として評価されます。

これらの資産が健全であればあるほど、銀行は企業に対する融資リスクを低いとみなし、融資条件が有利になる場合があります。



経営者個人資産を考慮することの問題点

1. 個人と企業の区別が曖昧になる

経営者の個人資産を企業の評価に加味することは、企業と個人の財務を混同させるリスクを孕んでいます。特に、経営者が個人資産を企業の運転資金として繰り返し投入する状況が続くと、企業本来の収益力や持続可能性が正しく評価されなくなる可能性があります。

2. 経営者に過度な負担がかかる

銀行が経営者の個人資産を重視することは、経営者自身が「個人の生活資産を守る」選択肢を狭める可能性があります。例えば、老後資金として蓄えた資産を担保に提供することで、万が一の際に生活が立ち行かなくなるリスクが高まります。

3. 企業の独立性が損なわれる

経営者の個人資産に頼る体制では、企業としての自立性や信頼性が十分に構築されない可能性があります。これは、企業の成長や外部投資家からの評価にも悪影響を与えることがあります。



経営者が取るべき対策

1. 企業と個人の財務を明確に分離する

経営者の個人資産を企業の運営に使うことを最小限に抑え、企業自身の収益力を高めることが重要です。そのためには、適切な財務管理やコスト削減、収益性の向上を目指す必要があります。

2. 銀行とのコミュニケーションを強化する

銀行に対して、企業の収益力や成長可能性を正確に伝えることで、過度に個人資産を重視されないよう働きかけることができます。具体的な経営計画書やキャッシュフロー予測を提出し、企業の健全性を示しましょう。

3. 個人資産の運用を見直す

経営者としては、自身の個人資産を守りつつ、企業にとって有効な形で活用する方法を考える必要があります。例えば、個人資産を流動性の高い形に変えることで、緊急時にも柔軟に対応できる体制を構築できます。



まとめ:個人資産と企業経営の健全なバランスを保つ

銀行が融資の自己査定において経営者の個人資産を考慮する理由は、リスク軽減や貸し倒れ回避のためです。しかし、経営者としては、企業と個人の財務を分離し、企業本来の収益力を高めることが最優先です。個人資産に依存する経営体制を脱却し、企業の独立性と成長性を確保する取り組みを進めることが、長期的な資金繰り改善の鍵となるでしょう。

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